日々のチェックで授業デザインのブラッシュアップ

臨時休校、分散登校、短縮授業と、授業日数・指導時間の確保を困難にする要因がズラリと並ぶ中、日々の授業をより効率的で密度の高いものにするには教室の対面授業で行う学習活動を精選する必要があります。

ターゲットとなる問いを設定することは本時の主眼や指導の目標を明らかにするとともに、個人で出来ることと教室で行うべきことの選別にも有益であるというのが、昨日の記事の主旨でした。

そうしてデザインした授業の一つひとつも、しっかりと成果を検証し、設計が正しかったかどうかを絶えず点検することが大切だと思います。

授業ごと/単元ごとの指導で獲得を図るのは「生きて働く知識・理解」だけに限りません。資料を読み解く力、協働で課題解決に臨む姿勢や方策、対話を通した思考の深化など、様々なものを意図したはずです。

それらの一つひとつについて、何らかの方法で成果を確かめておきたいところ。成果検証なしには、指導はやりっぱなしになりがち。せっかくの実践を共有しようにも効果を伝える客観的材料を揃えられません。

日々の授業の中で行うことだけに、手間は最小限に抑えることが肝要です。ターゲット設問に対して生徒が作った答えや、授業を終えるときに記入させるリフレクションシートなどを有効に活用しましょう。


❏ ターゲット設問への答案と行動評価の結果

生きて働く知識・理解の獲得が意図した通りに実現したか、それらが思考力・判断力・表現力という形で発揮されたかは、ターゲット設問に対して生徒が導いた答えを観察[採点]して評価することになります。

資料(テクストやデータ)を正しく読み解くことができたかも、生徒の答案から推定することができるはずです。

一方で、協働で課題解決に取り組むときの姿勢や行動などは、観察の結果を観点別の評価規準(=行動評価ルーブリック)に当てはめて定量化することになります。

行動評価ルーブリックがまだ開発途中で仕様段階にも入っていないようなら、授業終了時に記入させるリフレクションシートにミニアンケートを追加するのでも十分に代用になると思います。
  • メンバーの発言を理解した上で自分の意見を表明できた
  • グループワークでは自分なりにチームに貢献できた
  • 話し合いを通して意義ある気づきがあった
といったように、授業をデザインしたときに先生が意図したこと/生徒に期待した行動などをセンテンスにすればアンケートは完成です。

配布、回収、入力、集計の手間を省くには、Googleフォームなどを用いるのが好適です。実際に、実践する先生も増えています。

慣れればアンケート作成はほんの数分で済みますし、ターゲット設問への解答(最初に作った答え、学び終えて作り直した答え)とリフレクションログも、入力するフォームを統合して一つにしてしまえば管理も容易、時系列での生徒の変化も把握できるようになります。

なお、如上の生徒による自己行動の評価は入力させておしまいではありません。先生方の目による評価と突き合わせるようにしましょう。

先生の評価と生徒の自己評価が大きくズレているということは、生徒が自分の行動を客観的に(=相対化して)評価できないということ。自らの行動をより良いものに変えて行く「自律性」を身につけさせるには、そのズレに気づかせる「先生からのフィードバック」が欠かせません。


❏ 個々の授業/単元指導の評価も一緒に

授業ごと/単元ごとに用意したターゲット設問を軸にデザインした授業。結果学力や学習行動に加えて、生徒の側での受け止め方もしっかりと確かめておきたいところです。

授業評価アンケートは、生徒側での認識や主観を質すものですが、生徒の主体的・能動的な学びを重視する方向に授業が変わっていく中、学習者たる生徒の認識・主観を確かめておく必要はますます高まります。

尋ねるべきは、設問そのものが合理的・効果的なものであったか、授業のデザイン(学習活動の個人ワーク、先生の説明、話し合いへの各活動への配分とそれぞれの手順設定)が妥当であったか、などでしょう。

アンケートに設定する項目は、その日の指導の主眼や学習目標、単元内容によって多少の幅が生じそうですが、基本的には、以下に例示したような項目になるものと思われます。

  • 目的や興味を持って今日の授業/この単元の学びに取りくめた。

    生徒にとって有意義な学びであったかどうかは、「何のために学んでいるか」の理解に左右されるはずです。ターゲット設問そのものが、生徒の興味や問題意識を刺激し得るものだったかの指標になります。cf. 解くべき課題で「何のために学んでいるか」を伝える

  • 教材や資料を通して学習内容をしっかりと理解することができた。

    教科書で学ばせることが基本ですが、ターゲット設問を解くのに必要な情報が足りなければ、何らかの資料を追加することになります。用意した資料や教材が生徒の興味関心に応えるものか、理解に困難のないものだったかも確かめておきましょう。

  • 作業や活動には戸惑うことなく、積極的に取り組めた。

    先生の指示が明確であり、且つ想定した通りのレディネスを生徒が備えていないと、この質問にYESと応えることはできなくなります。活動の配列が不合理で改めるべきところがあれば、否定的な回答が増えてくるはずです。

  • 先生との問答や周囲との話し合いで理解は思考が深まった。

    対話的な学びが目的とするところは、活動性の向上ではなく、気づきの交換による思考の深化、視野の拡大です。そうした効果を生徒が実感できれば、次からのさらに意欲的な参画も期待できるはず。対話の設計は先生方の腕の見せ所です。


授業を行ったときの教室での感覚と、これらのアンケート結果を突き合わせながら、より良い授業デザインの実現を一歩ずつ図りましょう。



新型コロナが招いた危機をきっかけに、学校のICT環境は急速に整備が続きます。BYODも進みます。PC/タブレットを常時手元において授業を受ける光景は遠からず普通のものになりそうです。こうした環境を活かして、授業ごと/単元ごとの授業デザインの合理性・好適性を確かめて行くことは授業改善を大きく加速させてくれるはずです。

教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一