休校明けの授業を円滑に再始動する

緊急事態宣言の解除を受けて、一部の地域では学校が再開されますが、当然ながら再開を以て学校に日常が戻るわけではなく、むしろこれからの課題の方が大きいのではないかと思われます。

休校期間の遅れを解消すべく先ずは年間授業日程を組み直すことからでしょうが、カレンダー上で授業計画をスライドさせるだけでは解消できない問題が多々ありそうです。再開後の教育活動をいかに円滑に素早く正常化できるかは、再開前の準備にかかるところが大きいはずです。


❏ まずは、家庭学習の成果をしっかり確認

家庭での自学自習を課した単元については、学習内容がしっかり理解できているか(=知識・理解が生きて働いているか)の確認を最優先して行う必要があります。

先月14日の記者会見では文部科学大臣がこう発言しています。

臨時休校が長期化した場合においては再開後の授業の中で、学校で指導していない内容全てを指導することがどうしても難しく、教育課程の実施に支障が生じるような事態も考えられます。
こうした事態に備え、学校が課した家庭学習の学習状況および成果を確認した結果、十分な学習内容の定着が見られ、再度指導する必要がないものと学校が判断した場合には、特例的に学校の再開後等に当該内容を再度学校における対面指導で取り扱わないこととすることができる、としております。
cf. https://www.mext.go.jp/content/20200411-mxt_kouhou01-000004520_1.pdf

家庭学習の成果を確認して、十分に定着しているようなら改めての対面授業は必要はない(=定着が不足するなら補習を行ったり、追加で家庭学習を課したりといった対応が必要)ということですね。

学びの成果を見極めないと、圧迫される授業日程を効果的に使うことが難しくなります。やらなくて良いこと、家庭学習で賄えること、教室でやらなければならないことの切り分けが最初の重要課題です。


❏ 確認テストを行うか、単元課題で評価するか

学校再開後に家庭学習に課した範囲の確認テストを実施するか、家庭学習で取り組んでもらう単元課題の提出を求めるかのいずれかになろうと思います。いずれの場合も、知識・理解が生きて働いているかを試せる思考・判断・表現の要素を備えた論述タイプとすべきことは当然です。

前者を採るなら、生徒にテストの予告を十分な時間的猶予をもって行いしっかりとテストに向けた準備をさせる必要があります。オンラインでの通知が簡便ですが、授業再開前に分散登校日があるようならそこでの連絡という形になろうかと思います。

課題を期限までに提出したからと言って、ちゃんと理解できているとは限りませんし、提出したことで安心し、その後の時間の経過で勉強したことが頭に残っていないかもしれません。

後者は、学校再開前に提出物に目を通して学びの成果を点検できることから再開後の授業計画も立てやすいことや、テストに貴重な授業時間を割く必要がないことなど、大きなメリットがありお奨めです。

二学期も授業日程がタイトになるため、中間考査は取り止めて単元課題で代替するのが好適かも知れません。習ったことを覚えたかどうかを試すことに偏りがちな定期考査のあり方を見直す好機かもしれません。

 ■ ノート持ち込み可の定期考査がもたらすもの


❏ 教室で学ばせることを絞り込んで授業を再計画

授業開始の遅れは2ヵ月近く(実質的には5週間程度でしょうか?)に及びますが、この遅れは年間授業計画の見直しで図ることになります。

当初予定では、教室での一斉授業で扱うことになっていた項目のうち、家庭学習の課題とせざるを得ないところも出てくるはずです。予定通りに教室での授業を実施することが目的ではありません。

要は、各単元で学ぶべきこと(知識だけでなくその単元の学び方も含まれると思います)をきっちりとマスターできれば良い話ですから、指導時間という「投資量」での考え方から、生きて働く知識・理解が獲得できたかという「成果量」の考え方への転換を図るべきだと思います。

別稿の「追記」でも書きましたが、「教える」という発想を離れて「学ばせる」ことに比重を移すべきであると考えますし、今回のコロナ禍が招いた危機はそうした変化を図るチャンスではないでしょうか。

なお、カリキュラムの遅延解消のリミットは、高3生に限って言えば、3月末ではなく冬休み前です。2学期の授業が終われば、そのまま自宅学習に突入し、正月の松が取れたら10日も経たずに新テストです。


❏ 遠隔指導やICT活用のノウハウを継続開発

教室での対面授業が可能になった後でも、オンライン授業の環境整備と指導法確立には、引き続き緩めることなく取り組む必要があります。

感染の再拡大があれば再度の一斉休校も覚悟しなければなりませんし、休校に至らずとも分割登校+時短授業という対応を迫られ、一斉&対面での授業ができなくなることもあり得ます。

近年の自然災害の甚大化を考えると、流行性疾患以外の原因で教室での授業が一定期間できなくなることも想定しておく必要がありそうです。

ハード面だけ整備しても授業者と学習者双方のリタラシーというソフト面が整わなければ、効果的な活用はできません。普段から、たとえ喫緊の必要がなくても、積極的にICT機器を使い、使用法への習熟を図るとともに、活用への着想を広げていく必要があると考えます。

柔軟な発想とノウハウの共有があれば、現状のハード環境であってもできることはグンと増えるはずです。

休校期間中に様々な試行錯誤が行われました。優れた手法の獲得に成功したケースも多々あるはずです。そうしたノウハウをそのままにせず、先生方で共有し、更にブラッシュアップしていくことが、次に訪れるかもしれない未知の危機に効果的な対応を可能にします。



追記: 5月15日に文科省から、「年度内に消化できない学習内容は次年度に回しても良い」「個人で出来ることと教室でしかできないことを切り分けて後者に重点をおく」といった趣旨の通知がありました。

新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた学校教育活動等
の実施における「学びの保障」の方向性等について(通知)

以下、同文書 p.4 ~ p.5 からの要旨抜粋。

地域の感染状況や児童生徒・教職員の負担を勘案しつつ、臨時休業期間中も登校日を設ける、学校の空き教室や社会教育施設等も最大限活用して分散登校を実施するなどして、学校での指導を充実させる。

例えば1コマを40 分や45 分に短くしたうえでの一日当たりの授業コマ数の増加等の時間割編成の工夫や長期休業期間の短縮、土曜日の活用、学校行事の重点化や準備時間の縮減等の様々な工夫により、学校における指導を進めることも考えられる。

臨時休業により、学校教育法施行規則に定める標準授業時数を踏まえて編成した教育課程の授業時数を下回ったことのみをもって、学校教育法施行規則に反するものとはされないとされていることも踏まえ、児童生徒や教職員の負担軽減にも配慮すること。

各種の取組を行い学校における指導を充実したとしても、なお年度当初予定していた内容の指導を本年度中に終えることが困難である場合には上記の取組に加えて以下(①、②)の特例的な対応をとる。

① 次年度以降を見通した教育課程編成

休校や分散登校の長期化などにより、本年度指導を計画している内容について指導を終えることが難しい場合、令和3年度又は令和4年度までの教育課程を見通して検討を行い、次学年又は次々学年に移して教育課程を編成する。

② 学校の授業における学習活動の重点化

個人でも実施可能な学習活動の一部をICT 等を活用して授業以外の場において行うことなどで、学校の授業において行う学習活動を、教師と児童生徒の関わり合いや児童生徒同士の関わり合いが特に重要な学習への動機付けや協働学習、学校でしか実施できない実習等に重点化する。



授業再開にむけて整えておきたい準備(記事まとめ)

教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一