対面以外の環境で実現する対話的な学び

対話的な学びの必要性は広く認識されるようになってきました。学びの中で対話を増やすことの目的は活動性を高めて生徒を退屈させたり居眠りさせたりしないことでないのは言うまでもありません。

対話の拡充を図ることで目的とするのは、
  1. 知識の共有、気づきの交換で発想の拡充と思考の深化を図ること
  2. 多様な意見に触れて、自分の考え方を相対化する機会を得ること
  3. 協働で課題解決を図る場面で必要な姿勢や方法を身に着けること
などであり、いずれも対話以外に実現の方法はなさそうです。

非常事態宣言が延長され休校が続く中、対話的な学びには大きな支障が生じています。休校が解除された後でも分割登校でクラス全体での対話が行えなかったり、フィジカルディスタンスを確保するためにグループワークが制限されたりといったことも想定されます。

様々な制限の中で、いかにして対話的な学びの場を確保し、その質を維持するかは差し迫った課題です。「文字を介した間接的な対話」「教え合い・学び合いの機能確保」「成果のシェアによる相互啓発」の3つを柱に解決策を探るのが好適だと思います。


❏ 文字を介した間接的な対話

対面やオンラインで行う直接的な対話ができないのであれば、多少まどろっこしくはなりますが、文字を介した間接的な対話で代替するしかありません。「代替」という否定的なニュアンスのある言葉を使いましたが、やり方によっては直接的な対話よりも大きな効果もあるはずです。

まずは、本時の学習範囲をしっかり学べば答えを導けるであろう問いをターゲットとして用意して、教科書や副教材を自力で学ばせましょう。

従来の教室での授業では、教科書内容を先生が講義して生徒に理解させてから、生徒が練習問題などに取り組んで自力で答えを導くという流れが一般的だったかもしれませんが、ここでの手順は逆です。

先に問い(ターゲット設問)を示して、解を導く/答えを作るのに必要な知識や考え方を、教科書や副教材の指定範囲からピックアップし、問いへの答えの形にまとめる中で学習内容の理解も進むはずです。

もうお分かりかと思いますが、この段階で対話的な学びの1つが実現しています。文字を介した先人との対話です。

教科書を読んだだけではわからないところがあれば、「これってどういうこと?」と辞書や用語集、参考書を当たれば良いだけの話です。先生や周りの生徒以外にコンサル先を持ち、活用できるようになることは、学習者としての自立に近づくために欠かせません。

中高生が教科書を読めていないというショッキングな研究結果が発表されたのはまだ記憶に鮮明ですが、この機会にしっかりと教科書を読んで自力で理解できるようにさせましょう。

 ■ どんな問いを立てるかで授業デザインは決まる
 ■ 自力で学ぶ力を育むのに重要な、最初に選ぶ”対話の相手”
 ■ 教科書をきちんと読ませる
 ■ 参照型教材を徹底して使い倒す


❏ どうしても自力で解明できないことは友達や先生に

教科書や副教材、あるいは先生が用意してくれた解説プリントをしっかり読んでも理解できない/問いが解けない場合は、周りに訊くことになりますが、ステイホームの最中には回りに訊ける相手はいません。

slackなどのコラボレーションツールが利用できれば生徒同士の教え合い・学び合いも活性化しそうですが、たとえそうした環境がなくても工夫次第でやりようはあるのではないでしょうか。

ある学校では、先生が管理者権限を持つ lineグループを作って生徒同士に質問のやり取りをさせているケースがありましたが、特に問題もなく、うまく機能しているとのこと。

教室内での対面でのやり取りに比べれば、「文字に起こす面倒」や「伝えきれないもどかしさ」を生徒は感じることと思いますが、そうした障害があるからこそ、聞きたいことや伝えたいことをきちんと言葉にする練習になるのではないでしょうか。

自分の考えや思いに相手の理解や共感を得られる表現を与える練習をこの機に積ませることができれば、話し言葉で感覚的に伝えるところの先に生徒を導くことになります。

生徒同士では解明できないところは先生が質問に答えたり、助言やヒントを与えたりといった介入をすることになりますが、出張るのは必要最小限に抑えましょう。「勉強は先生が教えてくれるもの」という間違った学習観を改めさせるチャンスを逃さないようにしたいものです。


❏ それぞれが作った答えをシェアして

生徒それぞれが作り上げた答えを提出させるのは、専用のシステムがなくても(多少の面倒は増えますが)十分に可能です。メールに添付させたり、共有ドライブに保存させたりとやり方は色々ありそうです。

提出物に採点や添削を施したり、助言を与えて答えの練り直しを指示したりすることもまた、先生と生徒の間の対話ですが、一対一の関係に閉じてしまっては、ひとりの学びをクラス全体の学びにできません。

好適な答え(優れた着眼や深い思考があるもの、典型的な誤解を含むものなど)を先生の目でピックアップし、教材として再配布することで相互啓発の材料に活用しましょう。

複数の答案を見比べさせて、ベストアンサーを選ばせ、その理由を言語化させれば、振り返りに必要な相対化のスキルの獲得が進むはずです。サンプル答案にどう朱入れすればより良い答えになるかを話し合わせたりさせるのも面白いのではないでしょうか。

こうした相互評価や公開添削でも対面でのやり取りはできませんが、コラボレーションツールやSNSを使えば、十分に「建設的な代替」が可能です。ほかの生徒の書き込みを読み、それを土台により良い意見(答案改善策)を考えるのは、学びをより深いものにしてくれるはずです。

zoomで互いの顔をシェアするよりも、先生がピックアップした答案に視点を集中した方が、却って議論がしやすいかもしれません。



学びにつながる対話を成立させるための大前提は、協働で解決すべき課題をしっかりと設定しておくことです。課題なしには対話は自己目的化してしまい、学習目標(生きて働く知識・技能、思考力・判断力・表現力、学習方策や学ぶ理由の獲得)の達成に近づくことができません。

別稿「休校期間中の自学自習をより確かなものにするために」でも書きましたが、休校期間中の教科学習指導では、「教える」という発想をひとまず脇に置き、「学ばせる」ことに意識を向けましょう。

新型コロナが招いたピンチですが、この状況下で重ねた工夫と建設的な思考は、将来に向けた新たな教育手法/指導法の開発と確立を図る大きなチャンスにもなりそうです。

まとめページ「休校中の学びをより大きくするために」

教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一