積極的な情報発信で校内外の不安に答える

新型コロナが教育現場を取り巻く環境にもたらした様々な変化に、生徒や保護者は大きな不安を抱えています。緊急事態宣言が解除され、一時の切迫した状態は脱したかのように思われますが、今後も状況は刻々と変化するでしょうし、そのたびに新たな不安が生まれます。

その不安に対して、自分が/我が子が通う学校がどんな答え/解決策を提示してくれるか、生徒と保護者は強い関心と期待を向けています。


❏ 学校が導いた解をタイムリー且つ正確に提示する

各地の学校の取り組みを一部だけ切り取ったマスコミの報道やインターネットなどで入ってきた断片的な情報に触れて、生徒や保護者が不安を不必要に膨らませてしまうこともあろうかと思います。

学校からの正しい情報を、不足なく、遅滞なく伝えていくことが何より大切な局面だと思います。

急を要する対処に手数と意識を奪われる中、情報発信は後手を踏みがちですが、これまでの経過や今後に向けた計画と展望はしっかり伝えたいものです。伝えないことにはわかってもらえず、わかってもらえなければ、「学校は何をしているんだ」とのあらぬ誤解も生みかねません。

保護者の不安に子が巻き込まれて良いことはひとつもありませんし、逆もまた然りです。しっかりと意図を伝え、不安に応えて行きましょう。

さらには、地域に暮らす、いずれ自校の志望者になるかもしれない生徒やその保護者、あるいはその指導に当たっている学校や塾の先生方も、大きく変化する環境に各校がどのように進化し適応を図ろうとしているのか、強い関心を寄せて動向を見守っています。

この難局に際して学校が示した解決策や学校が進もうとしている方向とその実際の歩みは、学校選びの重要な材料になるやもしれません。


❏ 学力保証と進路実現に道筋を示すのは最優先課題

まず答えるべきは、「学校に日常が戻るまでの期間、どうやって生徒の学びを保証するか」であり、最上級生に対しては、「生徒一人ひとりの進路希望をどう実現させるか」だと思います。

これまでに各地でお手伝いをしてきた学校評価アンケートでは、学校のタイプの違いに拘らず、学校への期待を訊くと、大半の生徒・保護者が学習指導と進路指導の充実を挙げ、不安や悩みの所在では学力と進路の2つを選択する割合が突出しています。

平時でもそうですから、新型コロナがもたらした急激な状況の変化に不安を膨らませる中では尚更です。実際、臨時休校中に緊急アンケートを行った学校では、如上の2項目の選択率が平時を大きく上回りました。

学びの成果を保証する取り組みとして、「オンラインで課題を出しました」「確認テストをやります」「授業動画を配信しています」と伝えるだけでは生徒や保護者の心に伝わるものはそう大きくないようです。

提出物へのフィードバックを通して学びの深まりを図っている、確認テストに代えて単元課題のレポートを課して思考力や表現力の養成を図ってきた、といった「意図を添えた発信」の方が説得力に勝りそうです。

進路指導でも、有効な手を打てず生徒に任せてしまっているのと、志望理由書/学修計画書の模擬作成とオンライン面談で、明確な志望理由の明確化を図って頑張りの力を引き出す指導に取り組んでいるのとでは、たとえわずか数か月でも大きな差が生じるのではないでしょうか。


❏ 新しい指導法の開発に取り組む協働の姿も発信

何段階かの分散登校を経て、教室にクラス全員が顔を揃えて授業を受けられるようになるのはまだ先です。

教室での対面授業が十分に行えないところをオンラインでの指導や課題を与えての自習でカバーするにしても、教室で行うことと個人の学習で行わせることの線引きを誤れば、学習効果は大きく損なわれます。

先生方の一人ひとりが最善と考える方法で指導に当たり、その効果を比較しながら好適な手法を教員間で共有を図るときと、個々の先生の意欲と試行錯誤に任せるときとでは、学校全体での学力(=学習成果)保証には大きな差が生じるように思われます。

新しい環境下での指導ノウハウの開発に先生方の協働で着実な歩を進めることの重要性は言うまでもありませんが、先生方だけがそれを知っているのでは不十分ではないでしょうか。

生徒、保護者の不安を解消し、地域の関心に応えることが学校に期待されるところと考えれば、先生方がより良い指導の実現に協働で取り組む様子を、たとえ断片的にでもしっかりと外に伝えるべきだと思います。


❏ 学校行事にも、代替策は新たな価値を作り得る

文化祭などの学校行事も、三密回避のために例年通りの実施ができないものが多そうですが、だからと言って各行事が持っていた価値の実現をただ諦めるかのように思われないようにしたいものです。

三密を回避する目的であれば、会場に人を突っ込まなければ良いだけの話です。演劇にしろ発表にしろ、作品の展示にしろ、オンラインで生徒たちの頑張りを内外に示せるはず。学校のPRにも打って付けです。

実行委員の生徒たちにどんな方法で開催できるか/良い行事になるかを議論させ、従来にない方法と価値を創造させることだってできるはず。

その話し合いにしてもオンラインでやれば三密は避けられますし、対面でうだうだやるより効率的で建設的な議論ができるかもしれません。

来訪者もバーチャルで参加できる展示方式だって、生徒の柔らかい頭なら思いつくかもしれません。今まで通りのことができない状況だからこそ、創意工夫で新しい価値が生まれるのではないでしょうか。


❏ 発信に際して気を付けたいこと

タイトルにある通り、緊急対応の最中だからこと、積極的に情報を発信する必要がありますが、やみくもに発信量を増やしてもさしたる効果は期待できません。以下の4つは頭に入れておきましょう。

  • 読み手の忍耐をあまり高く見積もらないこと

    説明を綿密に行おうとするとどうしても情報量が増えます。読み手が最後までついてきてくれれば良いですが、必ずしもそうとは限りません。シンプルな言葉で簡潔に表現するとともに、様々な観点での情報が混在しないよう、カテゴリーを分けて系統立てましょう。

  • 学校の発信に対する来訪者の反応を探れる仕組みを整えること

    系統立ててHPで行う個々の発信には、サイトに組み込んだFacebookやTwitterで概要を伝える導線の入り口を作れば、「いいね!」の数で共感の度合いを探れます。

    これから増えるWEB学校説明会でも来訪者の関心の所在にはより敏感になりたいものです。(cf. 学校説明会での来訪者アンケート

  • 当座の対処は、可能な限り5年後、10年後と関連付けて

    当座の危機への適切な対処は何よりも大切ですが、学校がどこを見つめて歩んでいるのかもしっかりと伝えることは学校の活動や意図に共感を得る必要条件です。木と森の両方に観察の目を向けられる経営眼を備えていることをきちんと示しましょう。

  • 状況が変わってもぶれないこと(建学の精神や校是を拠り所に)

    新型コロナがもたらした緊急事態ではありますが、開学以来、学校に関わる人々が大切にしてきたものを軽視することはできません。実現の方法は変わっても、社会の変化に解釈を見直しても、根っこの価値は決して見失っていない姿勢を示すことが肝要です。

このセクションを書きながら感じたことですが、この4つの留意点は、どんな局面にあっても学校広報の基本だと思います。


教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一