対策はスピード感をもって着実に実行

学校に限らず組織経営にはスピード感が大事だと言われますが、矢継ぎ早に手立てを講じながら、その一つひとつの実行が疎かになっては何にもなりません。スピードと着実性を両立させる必要があります。対策の打ち出しだけはスピード感があるのに、肝心の実行フェイズでブレーキが掛かり、頓挫しては何にもなりません。

新型コロナの感染拡大が始まってから状況が刻々と変化する中で、各校はそれぞれの対策を講じていますが、多くの対策が積み上がり、意識が分散したのか、外形的には実行されていても、内容の充実や改善という点で一つひとつを仕上げ切れていないケースも散見されます。

分散登校が続いていますが、学校が再開された今、休校期間中に生徒や保護者が抱えた不安に向き合うことや、遅れた指導計画を取り戻して生徒の学びを保証することが最重要課題だと思います。この局面でもスピード感を持って計画を立て、滞りなく実行に移して、一つひとつの課題を確実にクリアしていきたいところです。


❏ 生徒の状況を把握し、不安に寄り添うにも

3ヶ月にも亘る臨時休校は、これまでに経験したことのない状況です。新入生オリエンテーションも十分にできなかったことも、授業開きもそこそこに自宅での課題学習に取り組ませたことも未経験です。

こうした場面では、経験に基づく直観があまり当てにならないことも多く、アンケートや面談でしっかりと調査を行うことが必要になります。

休校期間中に抱えた悩みをアンケートや面談で把握する計画を立てている学校もありますが、アンケートの実施をゴールにしてはいけません。

調査結果をきちんと解釈した上で、指導に当たる先生方の共通方針とし実際の指導に活かすところまで進めないと、アンケートと面談がただ時間を消費するだけのことになりかねません。

アンケートの内容や実施スケジュールを検討したところで、アンケートの実施からデータ分析を経て教員間で結果を共有する機会までを一連の活動として計画し、且つその意図するところを現場の先生方にしっかり伝えておかないと、ちぐはぐなことが起こります。

当然ながら、着実な実行には専門知識とマンパワーが必要です。

養護教員、生徒指導部の先生方、学校カウンセラーなどでチームを作って、調査結果に基づく対策の具体化と実行までの各フェイズでの役割分担・協働体制までしっかり検討しておくことが、その後の「スピード感のある実行」に繋がるはずです。


❏ 不足する授業時間を補い、学びを保証するにも

臨時休校で授業時間は大きく削られています。それを取り返すにも、単に家庭学習の課題を増やしたり、補習・講習を実施したりといった外形的な取り組みだけでは初期の成果を得るのは困難だと思います。

課題の付与、補習の実施という外形を整える計画を作るフェイズがスピーディーに進んでも、その中身を充実させる取り組みを備えなければ、結果的に、「生徒の学びを保証する取り組み」は遅々として進まないことになります。

教室での対面でしかできない学習活動と、それ以外の方法で取り組ませることができる学習活動の切り分けが欠かせませんが、教科担当の先生方だって経験のないことに戸惑いがあったり、思い切りがつかなくなったりすることだってあり得ます。

これまでの臨時休校の期間でも、すでに各先生がそれぞれに最善と思った方法で指導に当たってきたはずです。思うように指導が成果を結ばなかったケースもあれば、手応えをしっかり感じ取れたり、単元課題でも生徒が的確なアウトプットをできてているケースもあるはずです。

こうした経験をシェアして、好適な指導法を抽出・共有できた教科では先生方が互いに共有したものをベースに、さらなるブラッシュアップにそれぞれが取り組み、改善に加速がつくはずです。

夏を越えたら、模擬試験や外部検定の実施も正常化されてくると思いますが、そこでの結果に、今この局面での取り組みの成果が表れます。


❏ 計画を再精査して、着実な履行を確実にする

学校生活の正常化に向けて各校それぞれにロードマップが描かれていると思いますが、走りながらでかまいませんので、これまでに打ち出した対策を再点検して、優先順位を付け直してみるべきだと思います。

ここまでの3か月間に校内外に発信した文書類にきちんと目を通して、既に完了したこと、進行中のこと、未着手のことに分けてみましょう。

進行中のことでも効果的な方策が未確立でスピードが上がらなかったり、マンパワーが枯渇して動きが止まっていることもあるはずです。

重要度の再評価を行い、必須あるいは優先度が高いと考えられるのであれば、知恵を絞って「できない理由」を一つひとつ取り除きましょう。

担当者間で話し合いの場を持ち、成功体験と失敗体験を共有する中で、有効なノウハウを探し出すことが必要でしょうし、余力を作りだすのに優先度の低いものから手を引いくという判断も欠かせません。

未着手のことについても、要否の再判断を行った上で、やるべきものは遅滞なく、しっかりと実行しましょう。内外に約束したのに未履行のものが残っていたら信頼を損ねる原因になります。



優先度の高いことに集中して、ひとつひとつ着実に可視化できる成果を上げることは、結果的に「スピード感のある経営」になると思います。

刻々と状況が変わる中だからこそ、走っているだけでなく、少し高いところから先を見ながら大局的な判断を重ねるとともに、打ち出した作戦がうまく運んでいるのか常に観察の目を離さないことが大切です。


教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一