カリキュラム・マネジメントの実行&検証フェイズ

カリキュラム・マネジメントという言葉が広く使われるようになってだいぶ経ちますが、マネジメントとは言うまでもなく「目標を達成する/成果を上げる」ためのものであり、計画、実行、検証、対処(いわゆるPDCA)で構成される活動です。

カリキュラムを通して形成しようとしている学力が変化した以上、計画フェイズに当たるカリキュラムの作成には従来と違った発想が求められるのは、前稿で申し上げた通りですが、実行や検証のフェイズにもまたこれまでと違った視点が必要になります。


❏ カリキュラムに込めた意図を日々の実践に反映

綿密に計画してカリキュラムを作成するのが「計画」フェイズであり、日々の授業を通した指導の実践が「実行」フェイズです。

カリキュラムそのものがどれだけ練り上げられたものであっても、意図通りに実行されなければ「絵にかいた餅」です。「科目内容を学ぶことを手段に能力・資質の獲得を図る」ことを旨に、日々の授業が行われているかどうかは、常に意識して点検を怠らないようにしたいものです。

ものごとが上手く行かないときは、「作戦ミス」と「実行ミス」に分けて原因を探る必要がありますが、前者は一定期間の指導の中で評価結果を積み重ねた「成果検証」が必要ですが、後者は主に日々の自己点検による「履行検証」が頼みとなります。

前稿で示した「学習内容×獲得させるべき能力・資質のマトリクス」を常に手元に置き、学習内容(=単元)を進めるごとに、計画で意図したことを実践に反映できているか確認するようにしたいところです。

学習内容と能力資質のマトリクス.png


❏ 学習内容と能力・資質の双方に的確な検証手段を

一方、作戦ミスがなかったかを検証するには、「学習内容を理解し生きて働く知識として定着したか」と「能力・資質の獲得」の両面で評価を行うことになりますので、それぞれに適切な評価方法が必要です。

学習内容の理解は主にテストや課題で評価しますが、知識の獲得量だけを測定していても、新課程が求める学力の形成に近づいたか判定できません。測定すべきは、獲得した知識が「生きて働いているか」です。

習ったことを正確に覚えたかどうかのテストでは如上の観点での評価はできません。初見の課題を与えて、知識や理解を活用させた結果を表現させる必要がありますので、考査問題もこうした学力観の変化に対応したものに切り替えて行かねばなりません。

 ■ 高大接続改革に備えて考査問題も新しいスタイルに

これに加えて、学習内容を学ばせることを手段に獲得を図る「能力・資質」の一つひとつについても、生徒一人ひとりの獲得状況(=指導の効果)を明らかにしていく(=測定する)必要があります。

各単元の学習内容はしっかり理解できていても、21世紀型能力を構成する「基礎力」「思考力」「実践力」が養われていなければ、新課程での学習目標は達成されていないと考えるべきだと思います。

検証の機会は、日々の授業の中にもあるはずです。能力や資質を獲得させるには、生徒がそれらを発揮する場面を作ることが不可欠ですので、そこでの行動をしっかり観察すれば評価材料は手に入るはずです。

但し、観察を感覚的/恣意的に行っては成果検証を客観的に行えませんし、それぞれの先生方が最善と考えて行った指導との効果の比較も難しくなりますので、観点別の評価規準を整えておく必要があります。

 ■ 新しい学力観に基づく評価方法(記事まとめ)


❏ 能力・資質を発揮する場=トレーニングと検証の機会

言語、数量、情報の各スキルで構成される「基礎力」は、主に不明を解消したり課題解決に必要な情報を集めたりする場面や、思考した結果を表現する場面において発揮・獲得されるものです。

教科書や資料、参照型教材などを読ませる場面は、日々の学習の中でいくらでもあります。読んで理解したことを言語化させれば、言語スキルの鍛錬と評価の機会になります。学習型問題も好適な材料です。

データテーブルやグラフを与えて、数字に潜む意味を読み取らせたり、調べ学習などを課して情報を検索、評価する練習をさせたりする場面を意識的に作ることなどで、数量や情報のスキルを駆使させる(=鍛える&評価する)機会が作れるのではないでしょうか。

課題解決、発見、創造の力は、PBLの要素を含む学習活動に取り組ませないと発揮のチャンス(=育成と評価の機会)が得られません。

論理的・批判的思考力というのは、突き詰めて考えるほどに定義が困難に思えてくる厄介なものですが、開き直ってシンプルに考えるならば、
  • 論理的思考: 筋道を立てて考える力(表現する力)
  • 批判的思考: 筋の通らないことを見抜き、対処する力
というくらいのところに落ち着くように思います。

この定義ならば、解法を考えてそれを他者の納得を得るように説明することや、正解が一つに決まらない問題/賛否の分かれるイシューなどを議論することで十分に要件を満たすはず。各教科の学びの中でも、そうした機会を設けるのは十分に可能ではないでしょうか。



能力・資質を発揮させて、鍛錬と評価の機会を作ろうとすると、限られた授業時間はさらに窮屈になります。従来通りの授業づくりの発想では必要な学習活動を授業内に配列できない可能性が大です。

となれば、別稿「教室でしかできない学びを充実~問いを軸に授業を設計」で書いた通り、教室での対面授業でしかできないことと、生徒が個人でもできることの切り分けをはっきりさせて、前者に当てる時間を大きく取れるようにしていくしかありません。

反転学習の要素も入ってきますので、生徒が自力でできることを膨らませる指導を重ねながら、徐々に生徒に任せる部分を増やしていく「段階的・予備的な指導」が成否のカギを握ることは言うまでもありません。

次稿「カリキュラムを活かす、目的意識を持った科目履修」に続く。

このシリーズのインデックスに戻る。


教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一