確かな学力を獲得させるための「学習活動の適切な配列」

科目固有の知識・理解を獲得させるだけなら、丁寧に教えて理解させてしっかり覚えさせれば十分ですが、新課程では、科目の内容(コンテンツ)を学ぶことを手段に、様々な能力・資質(コンピテンシー)の獲得という目的を達成する必要があり、生徒がそうした能力・資質を駆使・発揮する場を整え、訓練と評価の機会を確保する必要性が高まります。

言い換えるならば、丁寧に教えきることから、生徒自身にきちんと学ばせることに授業作りの発想を転換する必要があるということです。

指導計画・授業デザインの中に、生徒自身が取り組む学習活動を正しく配置することの重要性に触れた記事をピックアップしてみました。


❏ 能力・資質は使わせ、鍛える場をきちんと整備

能力や資質を高めようとするなら、生徒自身がそれらを使って自ら鍛える場が必要であるのは改めて申し上げるまでもありません。

マラソン競技をテレビで観ているだけでは持久力は身につきませんし、実際に山に登ってみれば体力も身につき、何に気をつければ安全に楽しい登山ができるかも学べますよね。

先生方が指導を計画し、授業をデザインするときには、カリキュラムの中に配列された学習内容の一つひとつを学びながら、生徒がどんな能力や資質を身につけているのか常に意識する必要があります。

日々の授業を行う中で、21世紀型能力を構成する要素の一つ一つがどこまで育めているか、点検も怠らないようにしたいところです。

学習内容と能力資質のマトリクス.png
 ■ カリキュラムは{学習内容×能力資質}で設計する
 ■ 授業を通して21世紀型能力は育めているか
 ■ 教科固有の知識・技能を学ぶ中で


❏ 評価も振り返りも、学習活動に取り組ませてこそ

生きて働く知識・理解やそれらを用いた思考力・判断力・表現力について、どのように獲得が進んでいるかを測定/評価するには、生徒自身の学習活動を通したアウトプットを観察する必要がありますし、主体性・協働性・多様性は活動そのものを注視しないと把握もできません。

活動とそのアウトプットをきちんと観察し評価しないことには、今後の指導でどうやって目標に到達させるか道筋もつけられませんし、経年的に指導の改善を図るための判断材料も得られなくなってしまいます。

生徒の側でも、自分自身の取り組みやそこでの成果を振り返ってみないことには、次の機会にどう挑むべきか課題形成もままなりません。

振り返りを通してメタ認知を高めることが、学力を伸ばし科目を好きになる鍵である以上、学びに自ら取り組む「活動の場」を生徒自身が必要としているということではないでしょうか。

 ■ 活動させるのは観察のため
 ■ 評価スキルの獲得とメタ認知の向上
 ■ 振り返りを経てこそ次への課題形成
 ■ 学習者としての成長を促す"活動評価"と"振り返り"(まとめ)
 

❏ 教室での学習活動と個人で取り組む学習活動

限られた授業時間の中で生徒に取り組ませる学習活動の充実を図ろうとするには、当然ながら教室でしかできない学びとそれ以外(=生徒が個人で取り組める学習)との切り分けを明確にしていく必要があります。

本時の学習内容を俯瞰し得る問い(ターゲット設問)を設定した上で、その解決に必要なパーツをリストアップし、それぞれどのような活動の中で生徒に獲得させていくのか考えてみるのが、如上の切り分けへの最も合理的なアプローチの一つだと思います。

問いを起点とする授業デザイン.png
教科書や副教材に記載されている内容であれば、生徒が自力で読んで理解し、知識として獲得できるはずですし、できるようにさせないことには学習者としての自立は図れません。

もし、やらせてみたけど本校の生徒にはハードルが高すぎるとお感じになったとしたら、これまでの学ばせ方にこそ見直すべきところがあるのではないでしょうか。

打つべき手を打たず、万が一にも自力で学べない状態のまま卒業させては、将来、何かを学ぶ必要に迫られたときに困るのは生徒自身です。

当然ながら、授業の作りが変われば、授業準備(予習)や学びの仕上げのあり方も変わってきます。新課程への移行では、家庭学習のあり方も見直さなければなりませんし、必要な学びを自力で進められる生徒を育てることにはこれまで以上の注力が必要になります。

生徒が学習活動に投じるエネルギーの大きさは、学習内容の定着とも密に関係します。生きて働く知識・理解の確実な形成にも、丁寧に教えることより、いかに生徒を学びの活動に向かわせるかが重要です。

 ■ 教室でしかできない学びを充実~問いを軸に授業を設計
 ■ 2020年対応型の"予・復習と授業のサイクル"
 ■ 答えを仕上げる中で学びは深まる
 ■ 強調は、学習者が投じるエネルギーを増やすことで



教室の対面での学びと生徒が個人で取り組む学びの双方において、生徒の活動量をいかに大きくするかが、新しい学力観の下での教科学習指導の成果を決定づける重要な要素ということになりそうです。

教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一