"長期休校への入試での配慮"が及ぼす影響を考える

新型コロナウイルス感染症の拡大によって休校が長引き、入試までに学習範囲を終えられない可能性が高まったことで、高校や大学は入試での配慮が求められ、そろそろ対応が出そろってきました。出題範囲を縮小するケースもあれば、特別な配慮をしないと決めた大学もあります。

報道でも、コロナ禍の大学入試、分かれる対応(朝日7/31)、公立高入試、出題範囲縮小も 「コロナ世代」危惧する声(同7/5)といった取り上げられ方をしています。

まちまちな対応に、受験生もその指導に当たる先生方も戸惑うところがあろうかと思いますが、こうした高校・大学の対応をどう捉えるのが良いか、またその影響はどこで出てくるか、改めて考えてみました。


❏ 未習のことでも説明付きで出題(学習型問題)

上記の記事にもある通り、一部の大学では「発展的な内容を出題する場合は補足説明を書く」という対応が取られることになります。

習っていないことでも、十分な説明がなされているのであれば、それを読んで理解し、それをもとに問いへの答えを考えるというのは、決して無茶な注文ではなく、むしろ求められて当然の「力」だと思います。

新テストの試行問題でも同タイプの出題がありましたし、私大入試でも学習型問題の出題例は散見され、既に目新しいものではありません。

日々の授業で「教科書をきちんと読ませる」ことを徹底し、初見の内容でも生徒が自力で読んで理解できるようにしておけば、特に対応に困るものではないはずです。

長引く休校への対応という切り取られ方をした「補足説明を書く」というやり方ですが、突然変異で登場したものではなく、高大接続改革や新課程が目指す学力像に沿うべく、すでに生まれていたものです。

学校で習っていないことなのにちょっと説明が与えられるだけで出題範囲に含まれてしまうのかと、余計な不安を覚えている受験生もいるかと思いますが、求められるのは特別な力ではなく、日々の学びにきちんと取り組んでいたら、十分に対処できるよと伝えてあげましょう。

もちろん、そういう授業が普段から行われていることが前提ですが。


❏ ポリシーを持ち、長期休校への特別な配慮をしない

一方、出題に特別な配慮はしないという大学もありますが、個々の発表を熟読すると、明確な理由をもった判断であるように思えます、

そうした判断をした大学は、昨年度までの入試でも自校のアドミッション・ポリシーに沿った、知識の有無ではなく総合力や思考力を試すことに主眼を置く出題をしてきたはずです。

これまでも、受験生にとって仮に初見のことであっても、問題文中に与えられた情報をきちんと拾い、答えが求めるものに編む思考を重ねさえすれば正解を導ける問題を課し続けてきた大学なら、今年に限って特別な対応はしないというのも十分に納得できる合理的な判断です。

今回の「長引く休校への配慮」を含めた各大学の「出題方針」は、どんな学生に集ってもらいたいかという大学の意志を反映したものであり、年度を跨いでもコロコロと変わるものではありません。

知識問題ばかりを出題していた大学では、こうした判断はできません。これまで入試という業務に、明確なアドミッション・ポリシーをもって取り組んできた大学だからこそ、この局面で「特別な配慮はしない」というスタンスを採り得たと言えるような気がします。


❏ 入学してくる生徒の学習履歴にバラツキを想定

大学入試と同様に、高校入試でも長引いた休校への配慮は様々であり、その影響は来年度に入学してくる生徒の学習履歴に及びます。影響の度合いによっては、来春の指導に計画の変更が必要かもしれません。

例えば、都立高入試では三平方の定理、中3の漢字などが除外されることになっていますが、それらをきっちり教える中学校もあれば、効率化優先で扱いを軽くしているケースもあり得ます。

また、私立高の対応もまちまちですから、併願校の組み合わせによって、都立高が除外した箇所をあまり掘り下げずに済ませた生徒もいれば、受験対策で本腰を入れて勉強してきた生徒もいるはずです。

そうした生徒が混在するクラスでの学習指導では、前提理解を一様に想定することはできません。新しい単元を学ぶときの土台となる既習事項の定着度を、その都度きちんと確かめる必要があるということです。

小学校、中学校の先生方も目一杯のはずですので、仮に中途半端な理解に止まってしまった生徒がいても、十分なケアができないまま送り出さざるを得なかったことも例年以上に多いかもしれません。

来年度の入学者には、入試とは別に単元ごとの習熟度点検の機会を設けた上で、必要な生徒に対象を絞った補習も計画しておいた方が良さそうです。合否発表から入学までの間の自宅学習課題にも、今回の臨時休校で培ったリモート指導のノウハウが求められるのではないでしょうか。


教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一