特色ある教育プログラムに対する意欲と興味の維持

各地の学校で、意欲的な教育プログラムが創り上げられ、特色ある教育活動が行われています。現地をお訪ねし成果発表会を参観したり、指導の様子を拝見させていただいたりする中で、生徒の皆さんの熱心な取り組みや指導に当たる先生方の熱意と工夫に、こちらがワクワクを感じることがしばしばです。

しかしながら、じっくり観察してみると、入学間もない1年生や2年生の一様な熱心さに比べて、3年、4年と学年が進むうちに生徒の間には温度差のようなものが生まれているように見受けられ、おざなりな取り組みやフリーライダーがちらほらと目に入ったりします。

せっかく作り上げた特色ある教育プログラムです。生徒の意欲と興味を高く維持するのは容易ではなさそうですが、原因を考え、有効な対策を講じることで、所期の目標に沿ってきちんと機能させたいものです。


❏ 躓きや期待との違いで生じる意欲や興味の低下

生徒募集に際して特色ある教育プログラムの魅力を伝えていれば、それを知ったうえで学校を選び入学してくる生徒は、プログラムへの期待を膨らませ、参加を楽しみにしているはずです。入学直後に見られる熱心な取り組みも当然だと思います。

プログラムに参加するたびに「夢中になって取り組めた」「頑張ってみたら成長できた」といったポジティブな感想を持った生徒は、達成感をモチベーションの原資に次のステージではさらに頑張ってくれるはず。

その一方、スタートから戸惑いや躓きばかりで、仕上がりも満足にほど遠かった生徒もいるはずです。周りの生徒の背中が遠くに見えるようになれば「もうやりたくない」と思い始めてしまうかもしれません。

また、実際のプログラムが自分で想像していたものと違っていることに落胆し、「なんだこんなものか」と興味を失うケースも考えられます。

側道や分岐が用意されていない、選択の余地がない「一本道」のプログラムでは、途中でプログラムにやる気や興味を失った生徒には、残りの在学期間は辛い/つまらないものになってしまいそうですが、その対策として別の受け皿を安易に用意することには疑問があります。


❏ 受け皿を作る選択肢がグランドデザインを曖昧に

プログラムのメインルートに意欲と興味を維持できなくなった生徒にも頑張る対象や活躍の場を持ってもらいたいと、他にも受け皿となる活動の場を用意して生徒が選べるようにしている学校は少なくありません。

探究活動の1年目は必修で、2年目以降は選択とし、浮いた時間を他の活動に充てさせる設計にしているケースなどはその一つです。「総合的な探究の時間」とは別に、起業プランの考案や国際交流にチャレンジする課外プログラムを置いているケースもあります。

こうした「多様な選択肢(オプション)」を用意することは、個々の生徒のニーズに細かく応える方策の一つであり、それ自体は好ましいことかもしれませんが、6ヵ年のストーリーを描いて配列した教育活動をしっかり踏破しない生徒を増やしてしまうリスクを抱え込みます。

別稿でも書きましたが、「選択肢の多さ、自由度の高さ」は「選択の難しさ」も作り出します。「好きに選ばせること」が「望ましい/最適なルートを歩ませること」を難しくすることも念頭に置くべきです。

好きなものだけ選んで食べていては、必要な栄養を摂れませんし、興味をもった生徒が無分別にあれこれ手を伸ばしては消化不良も心配です。

学校には教育目標があり、育成を目指す人間像があるはずです。それに近づけるために「グランドデザイン」の下で先生方が知恵を出し合い、練り上げたプログラムには、安易にバイパスを設けたくありません。

できるだけ多くの生徒にしっかりとメインルートを歩き通してもらい、必要な経験とそれらを再構成した学びを確かなものにすることにこそ、注力すべきであり、優先すべきは「プログラムの更なる改善と、意欲と興味を失わせないよう講じる対策」だと思います。


❏ 成果のたな卸しと次に向けた課題形成

学校が特色として打ち出している教育プログラムに対して一部の生徒の意欲と興味を失っていく一因は、生徒一人ひとりの取り組みへの評価やフィードバックが適切に行われなかったことにあるかもしれません。

もちろん、プログラムそのもののブラッシュアップを重ねて、より強く意欲と興味を刺激するものに改めていくことも重要ですが、活動のたびに「出来たことのたな卸し」と「次に目指すことの確認」ができていれば、自己効力感や興味・意欲を失わせることは少ないはずです。

経験したことを再構成して自力で学びにできる生徒には、経験の場を用意してあげるだけで十分でしょうが、そうでない生徒には経験を再構築するのを助ける先生や周囲からのフィードバックや助言が必要です。

あるフェイズでの活動が満足のいく成果を得なかったとしても、次の機会ではもっと上手くできそうだと見通しが立てば、凹んだりする必要もなく、むしろチャレンジする意欲が刺激されるのではないでしょうか。

先生方からの評価とフィードバックで導くだけでは、生徒が自力で次に向けた課題を発見し、その達成方法を考えだす力(課題形成力/適応型学習力)を養う機会が持てません。他の生徒が残したリフレクション・ログなども参考にさせ、振り返りのスキルを獲得させていきましょう。

リフレクションの結果をシェアすることには、生徒の答案をシェアして作る学び(相互啓発)と同じ効果が期待できます。

 ■ 探究活動における評価とフィードバック
 ■ 言語化を通じて育む「振り返りのための相対化スキル」
 ■ 学習者としての成長を促す"活動評価"と"振り返り"(まとめ)

特色ある教育プログラムは、活動の中でどれだけ完成度の高い成果を得ることができたかよりも、プログラムを経験する中で学習者/実践者としてどれだけ成長できたか/課題発見力や課題解決力、適応型学習力などを獲得できたかによって、成否が決まるのではないでしょうか。

一つひとつのフェイズをしっかり踏ませてプログラムを踏破/完走させてこそ、そうした成長(所期の目標の達成)が期待できるはずです。



ホームルームというコミュニティを、生徒がそれぞれに意欲を向ける活動を選ばせることで分化させるリスクや、あれこれと手を出した挙句に消耗や疲弊から取り組みがおざなりになるリスクを避けるためには、いかに教育活動全体の設計をシンプルにするかが大切だと思います。

教科学習、探究活動、進路指導を一体化したコンパクトなカリキュラムの実現は、そのためにも欠かせないものだと思います。互いの重なりを最大化することで「重層化」をはかれば、活動の総量(=教育活動の全体設計)が膨らみすぎることもないはずです。



教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一