指導計画の確定前に大学/中高入試の出題をしっかり点検

入試シーズン真っ只中です。先生方は日々の生徒指導や校務に入試業務が加わり、ご多忙を極める毎日と拝察いたします。「このタイミングでまた余計なことを」とお𠮟りを受けそうですが、この時期にこそ最新の入試問題にできる限り目を通しておきたいところです。

目を通すべき/点検の対象とすべきは、生徒が目標とする大学群の出題内容と、自校入試での答案、そして競合校(中高)の入試問題です。


❏ 入り口と出口の変化に合わせた道程の再設計

大学入試では、高大接続改革で出題に様々な変化が生じています。

出題にまったく変化がない大学があったとしたら、その大学の教育改革への覚悟を疑うべきかも…。(cf. 出題内容から窺う、大学の教育姿勢

生徒を送り出すときに(出口で)求められる学力が変化したら、自ずとそこに至る道程も違ってきます。新入生はもとより、春に進級を控えている在校生に対する授業でも、指導計画や学ばせ方に相応のアレンジが必要になるはずです。

自校の入学試験でも学力観の変化に応じて出題を工夫したところがあると思います。新たに求めた学力を、入学希望者/合格者がどこまで獲得しているのか答案にじっくりと目を通し、4月から担当する生徒の指導で何をどこまで前提にして良いか見極める必要もあります。

言うまでもないことですが、指導は「入り口と出口を繋ぐもの」です。出口/ゴールが変わり、歩み出し/スタート地点も変わったとなれば、生徒に歩ませるルートにも再設定が必要なのは当然の帰結です。

学習する内容(コンテンツ)に大きな変化がなかったとしても、それらを学ぶ中で獲得すべき能力や資質(コンピテンシー)には大きな違いが生じています。(cf. 授業を通して21世紀型能力は育めているか


❏ まずは、生徒が目標とする大学群の出題研究

大学入試の出題研究では「問題を眺める」だけでなく、実際に受験生が答えを導き出すまでの工程を具体的にイメージし、各フェイズでどんな能力が必要とされているか、受験生視点で考えてみることが肝要です。

先生方は各教科の専門家ですから、持てる知識や考え方を自在に活用して、どんな問題にも解を導けてしまうでしょうが、そこでのプロセスはときに無自覚(意識下)の領域におかれます。

解けてしまうだけに、何が足りないとどこで躓くのか(=学習者にとってのクリアすべきハードル)を見落とすこともしばしばです。

言うまでもありませんが、ここで見立てを誤ると、指導計画づくりも、個々の授業での主眼の置き所にも間違いが生じるリスクが膨らみます。

必要とされる能力・資質を、「どの単元を学ばせるときに、どんな学習活動を設定することで獲得させていくか」をじっくり考えて指導計画やカリキュラムを作ることが大切であり、求められています。

 ■ カリキュラムは{学習内容×能力資質}で設計する

学習内容と能力資質のマトリクス.png


❏ 自校を受験した/合格した生徒の答案

出口で求められる学力の変化は、生徒が目標とする大学群の出題研究で把握するとして、もう一つしっかり見極めておくべきことは自校に入学してくる/4月から担当する生徒の学力です。

出題を担当した先生方は、個々の設問に込めた出題の意図やそこで測ろうとした学力を十分に理解しているでしょうが、出題に関わらなかった場合は、自校の入試問題についても改めての「研究」が必要です。

中高の定期考査問題を拝見すると、入試で求めている学力の獲得を前提としない(後退しているようにすら見える)ときがあり、普段の授業でも入学前に生徒が獲得していたものを土台にできていないと想像されるケースが少なからずあります。

また、問題をざっくり見て、全受験者の平均点や合格最低点しか確認しないのでは、自分が担当する科目で何をどこまでを前提にして良いのか判断ができないのは容易にご想像いただけるのではないでしょうか。

そもそも合格最低点は3教科/5教科の総合点ですよね?

担当教科での合格者得点分布までは最低限知っておくべきですし、個々の大問の正答率(これも受験者全体と合格者で分けて把握したい)や、記述・論述問題での答案にもじっくり目を通さないと、4月から預かる生徒の学力は把握できません。

個々の先生方が、しっかりとした土台を整えて新年度の授業準備に当たれるよう、こうした資料を調えて校内で共有を図ることも、入試業務を担当する組織の重要な仕事であろうと考えます。


❏ 競合他校(中高)の入試問題も経年的に研究

入学してくる生徒が獲得している学力のうち、自校入試の答案の点検で知り得るのは、出題した内容が焦点を当てた部分だけです。

出口で目指す学力をしっかりイメージし、そこに至る学びの過程(カリキュラム/指導計画)を練り上げ、それが前提とする/入学者に確保してもらいたい学力を的確に測れる入試問題をお作りになったとしても、限られた時間のテストで確かめられたのは学力の一部だけです。

受験生は、それぞれが目標に考えた志望校の問題に合わせて勉強してきていますし、塾などの指導もそうした方向で行われますので、競合他校の入試問題を調査すると、自校を志した生徒がどんな中継点(中高の入試)を目指して勉強してきたか、ある程度まで想像がつくはずです。

もちろん、他校の入試ですから答案の精査などは望むべくもありませんが、生徒が経てきた学びの方向性を窺い知る上で、数少ないアクセスが可能な資料の一つであり、活用しない手はないはずです。

競合他校でも、出口学力→教育課程→自校入試という如上のプロセスを踏んでいるはず。入試問題をみればどんな教育の実現を目指しているのか知ることもでき、自校の教育設計の参考にもなると思います。

中には、新しい学力観のもとで意欲的な出題もあろうかと思いますし、問い方/学ばせ方の新たな視点も得られるかもしれません。

■関連記事:
  1. 出題研究を通して"問い方"を学ぶ
  2. 入試問題を授業の教材に使うときに


教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一