提出物は丁寧に添削して返すのがベスト?

日々の学習指導の中では生徒に様々な提出物を課しますが、それらをどう取り扱うのがベストなのか、正解は中々見つかりません。丁寧に添削して返却することが思考力や表現力を高める上で本当に効果を挙げているのか、最善手が他にないかは疑ってみる必要があるように感じます。

丁寧に答案に目を通し、先生が「添削」してあげれば、生徒はその答案をより良いものに仕上げ直せるでしょうが、先生に助けを求められない場面で、きちんと思考を重ね、表現できるかどうかは別の話です。

生徒が自分の答案を客観的に評価し、より良いものに仕上げるためにどうすれば良いか考え出せるようにしていくことにこそ、指導の目標とするところがあると考えます。


❏ 答案を完成させることより、その方法の獲得を優先

丁寧な添削を受け、どう直せば良くなるのかを具体的に「朱書き」で示してもらえれば、答えや作品は完成に近づけるかもしれませんが、添削者(=先生)の助けがないとより良い答え/作品に近づけないままにしては、そのタスクを用意した目的は達せられていませんよね。

直された理由も十分に理解しないまま「こう直せば良いのか」と安易に納得させては、生徒の学びはそこでストップしてしまいます。

自分の答案を客観的に評価し、どこに改めるべき点があるか、観点の欠落や思考の浅さが残っていないかなどを、自力で捉えられるようにしていくことにも重要な指導目標があるはずです。

幾つかの段階を経て、自分の答案を正しく評価し、より良いものにブラッシュアップできるだけの「メタ認知」を獲得させていきましょう。

別稿「新共通テストの採点基準~正しく適用できる力」で触れた通り、答案を正しく評価する力の不足は多くの生徒が抱える問題の一つです。

指導の入り口は、実際の答案を用いた公開添削がお奨めです。


❏ 答案評価の導入練習に公開添削を

生徒が実際に書いた答案をいくつかピックアップしておき、生徒の面前において公開添削を行う中で、どのように答案を見るか/評価すべきかを学ばせていくのが指導の第一フェイズだと思います。

複数の答案を見比べさせ、どれが一番良いかを選ばせ、なぜそれを一番にしたのか尋ねて言語化させていくのであれば、生徒はそれほど構えることもなく、思ったところを言葉にします。

自分の頭の中で考えたことに加えて、他の生徒からの指摘や意見に触れる中で、様々な気づきを得ますので、「答案の見方」に観点を増やしていけるはずです。

当然ながら、劣っていると評価された方の答案には、何らかの不備や不足があるはずなので、それを指摘させたり、どう直せばより良くなるかを個人で考えさせたり、ペアや小グループで話し合わせましょう。

答案上での添削は、生徒本人と先生の間に閉じたものになりますが、多くの生徒に共通する問題/指導課題であれば、一つの答案からの学びをクラス・学年全体の学びに広げたいものです。

こうした訓練を重ねるうちに、答案のブラッシュアップという具体的なタスクへの取り組み方を学びつつ、土台となる思考力・判断力・表現力も徐々に鍛えられていくはずです。

他者が表現したものを正しく批評できる力を身につければ、対象を「自分が書いたもの」に切り替えるだけで、学習者/表現者としてステージを一つ先に進めるのではないでしょうか。


❏ 添削よりも、気づきを促す問い掛け

実際に答案を書かせても、添削して返却するだけでは、生徒は「こう直せば良いのか」と受け入れるだけになりがちなのは前述の通りです。

ちなみに、志望理由書のように期限までに様式と内容を調えることが優先される場ならば、添削も「次善の策」として有効かもしれませんが、不用意な添削は、生徒から内省を深める機会を奪うリスクがあります。

朱書きで直し方(直した結果)を示すことよりも、何が拙いか、どんな観点が欠落しているかを気づかせるような問い掛けをコメントとして付すことに注力した方が、指導効果は大きくなるはずです。

添削を、「加筆や修正を肩代わりする行為」として捉えるのをやめて、答案上で行う「生徒との対話」と考えるのが好適ではないでしょうか。

「こういう反論には、どう答える?」
「ここの論理がわからないので、もう少し説明して」

といった書き込みで、生徒自身の再思考/表現を求めることにも注力しましょう。そうした問い掛け/語り掛けを繰り返していくなかで、生徒が自分の中で同様の対話ができるようになれば、「メタ認知」の獲得が一段進んだことになるはずです。


❏ 過年度生の答案を材料に、添削方針のすり合わせ

如上の「公開添削」の材料は、先輩学年や過年度生の答案に求めるのも好適だと思います。同じ単元を学ばせたときの答案や提出物から添削に使えそうなものをピックアップしていきましょう。

過年度生の答案を材料にすることのメリットは、「自校の生徒が書きそうな答案(実際に書いた答案)」であることに加えて、指導計画の立案の段階で、具体的な材料を実物として手元におけることにあります。

それらを教科内の先生方がそれぞれに添削を行い、評価の観点や規準、添削の方針などをすり合わせれば、どこに力点を置いて指導を行うか、どんな表現でフィードバックするかなど、複数の先生の知恵と経験が組み合わさり、一人で考えたときより良い指導知見が生まれるはずです。

今現在指導している生徒の答案を材料にするのがリアリティには勝るでしょうが、日々の学びのサイクルの中に、こうした先生方の協議・協働の工程を割り込ませるのは至難の業です。

すべての生徒により質の高い指導を差異をできるだけ小さくして提供するのは、教科/学校の組織としての責任だと思いますが、先輩学年の答案に材料を求めることで、その実現に近づくことができそうです。


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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一