分散登校/オンライン授業下での授業計画の見直し&修正

緊急事態宣言の延長と対象地域の拡大で、学校の授業にも影響が大きくなっています。分散登校とオンライン授業の併用で対応しているケースが多いようですが、通学時間をずらすための短縮授業なども行われる中で、授業を予定通りに進めるのは容易ならざるものと拝察いたします。

たとえオンライン環境が整っていても、画面を見ながら生徒が集中を維持できる時間は普段の授業より短くなりますし、アクティビティの切り替えやフォーメーション(全体授業⇆ペアやグループでの活動)の変更も、普段の教室ほどスムーズには行かず、時間を圧縮するばかりです。

ましてやオンライン学習環境の整備が未だに進行中という学校では、授業に組み入れることができる学習活動にも制限が多いはず。このような状況下では、指導計画通りに授業を進めるだけでも困難を極めます。

とは言え、指導計画を大きく崩してしまっては、後に学ぶ単元の学習にしわ寄せが来るのは必至。確かな学びが実現しないことには当初の設計で想定していたカリキュラムのスパイラルも機能しなくなります。

教室での対面指導が普通にできない状況(しばらく続くと思います)にあって、いかにして指導計画をできるだけ崩さずに、実りのある学びを積み上げさせていくかは、すべての先生方が知恵を出し合い、解決していくべき課題だと思います。


❏ 指導計画の調整は「進度」より「深度」に着目して

指導計画に調整を加えるときには、単元進行などの「進度」ではなく、一つひとつの授業でどこまで学びを深めさせるか、すなわち「深度」に着目して行うのが好適ではないかと考えます。

別稿の通り、学びや思考の深まりは「結論を得るまでにどれだけの問いを立てたか」というモノサシを当てるべきものと考えますが、限られた授業時間の中で、出来る限りの問いを重ねるとともに、時間に収まらなかったところは、任意課題としてやる気と学力に余裕のある生徒に挑ませるというのが、この状況下では「落としどころ」の一つでしょう。

また、「深さ」とともに「広がり」(どこまで学びを拡張するか)も、利用可能な指導時間に合わせて調整していくべきだと思います。

普段の授業でも、単元を理解するときの核となるところを確実に押さえることを目的とした「必達目標/課題」とそれをクリアした生徒に挑戦させる「上位目標/課題」、さらには学力や学欲の高い生徒の知的欲求を満たすための「挑戦課題」といった具合に、複線的なハードルを設定しているのであれば、如上の調整は比較的容易かと思います。

各単元を学ばせる中、より多くの生徒が必達目標をクリアできるようになることに普段以上の注力をもってあたり、上位目標とその先は生徒の自主的な取り組みを期待するという「割り切り」です。もちろん、個々に声をかけて「自主性」を刺激していくことも大切ですが。

 ■ 「学びの拡張」まで考慮したカリキュラムの設計
 ■ ひとつの課題から複線的なハードルを作る


❏ 必達目標の先の学びは、生徒の相互啓発を活用して

任意課題に生徒が取り組んだ成果(=提出物)にはしっかり目を通した上で、良く出来ているものを、配信したりプリントにして配ったりすることで生徒間でシェアさせていきましょう。

他者の答案を見れば、様々な気づきもあり、自分と異なるアプローチやまとめ方に触れての学びもあります。自分が導いたのとは違った結論を前に、そこまでの自分の考えに新たに問いを立てることもあるはず。

ちなみに、無作為に全生徒の提出物を全員が見るのでは、ポイントもぼやけてしまい、学びは成果を結びません。シェアするべきものは先生の目でしっかり精選しましょう。

こうした相互に学ぶ環境を整えてあげれば、本来の対面指導において上位目標まで取り組むことができていた生徒なら、自ら/互いに学ぶことも十分にできるはず。シェアするものに加えたコメントや「この問題が解けたなら次はこの問題はどう?」という誘導も大切です。

 ■ 生徒の答案をシェアして作る学び(相互啓発)
 ■ 提出物は丁寧に添削して返すのがベスト?


❏ リアルタイムでの指導時間にやることを精選

分散登校や短縮授業で実際の指導を行える時間が短くなる以上、リアルタイムで指導を行う場でやるべきことをきちんと精選し、生徒が個々にできることはそこから徹底して切り離すことも大事です。

別稿「教室でしかできない学びを充実~問いを軸に授業を設計」で書いたことは、オンライン指導を余儀なくされたときだけでなく、普段の授業の中でも弛まずに実現を図るべきことがらです。

教科書に書かれていることなら生徒自身がしっかり読んで理解すべきですが、「読んで理解しなさい」という指示だけでは、生徒はどうしたら良いか戸惑いますし、どこまでできるようになれば要求を満たしたことになるかもピントきません。

教科書をきちんと読めば答えを導けるような問いを用意して、「確認問題」として課題指示の冒頭に示しておくことで学びに方向性と到達点を明示しましょう。Googleフォームなどを使って確認問題への答えを提示/投稿させれば、理解の度合いもある程度は把握できます。

 ■ 休校が続いて、何をやればいいのかわからない?

教室での学びは、ここまでの準備を生徒に取らせてからです。

なお、自力で教科書や解説プリントなどを読ませるだけでは十分な理解形成(授業準備)が厳しいと思われる箇所があれば、解説動画を作ったり、探してきたりして、生徒に視聴させるのが好適です。

そうした箇所をできるだけ少なくしておく(=自力で教科書を読める生徒を育てておく)ことは、普段の授業を進める中でも重要なミッションですが、事がここに至って後悔しても始まりません。適切なサポートを遅滞なく打ちましょう。反省と日々の授業の改善はその後です。

ちなみに、解説動画を用意すると「視聴すること」をタスクとして課しがちですが、「わからないときは利用してね」という具合に利用は生徒の主体性に任せた方が良いかもしれません。

40分なり50分の授業を一本の動画で構成するのではなく、個々の項目の理解を補助するためのツールとして作り、使わせるのがポイントです。

 ■ 動画で授業を完結しない~授業を構成するパーツとして

こうした複合的な方策の組み合わせで、単元理解の核さえしっかり作っておけば、その先の学びは、教室での対面指導が全面的に再開できた後でも、ある程度の巻き返しができるのではないでしょうか。


❏ 非対面でも、学びには対話の要素を

別稿の通り、「学びの深さ」を測る指標の一つは、「どれだけ問いを重ねたか」ですが、オンライン環境や短縮を余儀なくされた授業時間の中で実現するのが最も難しいのは、問いを積み上げる対話だと思います。

オンライン環境が整っていない、対面での授業時間が足りないといった場合でも、対話的な学びの要素を授業から切り離してしまうと、新課程が求める新しい学力観に基づく学ばせ方から遠ざかるばかりです。

上述の通り、生徒が個人で取り組める活動でカバーできることに、貴重な授業時間を余計に割かないことが先決。分散登校や短縮授業で減少した授業時間は、できるだけ対話に充てていきたいものです。

方法次第ですが、別稿「対面以外の環境で実現する対話的な学び」でも触れたように一連の学習プロセスの中に「文字を介した間接的な対話」だって組み込めるはずです。リモート学習で「答えが一つに決まらない問題」を扱うというチャレンジにずっと取り組み、一定の成果を得ている先生もいらっしゃいます。

■関連記事:
三度めの緊急事態宣言~分散登校、リモート学習への備え



冒頭でも触れた通り、難しい局面にあって、眼前の課題に解決を与えるにも、周囲の先生方との協働や、それぞれの先生の取り組み(効果のあったもの)のシェアは普段以上に重要だと思います。

校内/教科内でも効果的なやり方を見つけ出している先生がいらっしゃるかもしれません。眼前にヘビーな問題がある時にこそ、先生方の間での密な情報交換と知恵の共有が必要だと思います。

新たに試したり、昨年度の緊急事態宣言から継続して工夫を重ねて来たりした効果的な取り組みは、実践者からの積極的な発信が何よりも大切です。取り組んできたことを完結にまとめ、共有していきましょう。

文字に起こすのは案外手間がかかりますので、それこそ動画にして校内専用チャンネルのYouTubeで発信してもいいのではないでしょうか。

教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一